した。ガスパールはすでに二月以上も外の空気をすはなかつたので、先生は、ガスパールを私たちと一しよに、村のはづれの牧場《まきば》へつれていきました。
 その日は、すばらしい、いゝお天気でした。私たちは人取りあそびをして、せい一ぱい走りまはりました。雪や氷すべりを思ひ出させる、つめたい北風を頬にうけて、はしやぎ喜びました。
 ガスパールは、いつものやうに、みんなからはなれて森のへりに立ち、木の葉をうごかしたり、枝を切つたりして、一人であそんでゐました。しかし、かへるとき、整列すると、ガスパールが一人だけゐません。みんなでさがしまはり、よび立てました。ガスパールは、にげ出したのです。クロック先生はいきり立ちました。先生の太い顔がまつ赤な色になり、舌のさきはドイツの、のろひの言葉でこはゞりもつれました。
 先生は、みんなをつれてかへつた上、私と、もう一人、大きな生徒をつれてガスパールの叔父のヘナンの水車場へ向つていきました。
 夜になりました。どの家でもみんな窓をとぢてよくもえた火と、日曜日のおいしいごちそうとであたゝまつてゐました。一すじの火影が道の上に流れてゐます。人々は、もう部屋の中で食事についてゐるのだとおもはれました。
 ヘナンのうちへつきますと、水車もとまつてをり、柵もとざされ、粉をはこぶ獣も人も、みんなかへり去つてゐました。下ばたらきのものが私たちのために戸をあけてくれたとき、馬や羊が、わらの中にうごきました。鳥小屋のとまり木の上では、はげしい羽ばたきの音と、おそれのさけび声がしました。それらの生ものが、みんな、こはいクロック先生を知つてゐでもしたやうに。
 水車場の人たちは、あたゝかな、あかるくあかりのついた大きな台所で食事をしてゐました。時計の振子から、釜にいたるまで、みがかれ、光つてゐました。
 ガスパールはヘナンと、おかみさんとの間にはさまつてテイブルのはしにすわり、だいじにされ、愛しなでられてゐる、幸福な子のうれしさを顔中にあふれさせてゐました。
 ガスパールは、にげかへつて、けふはオーストリアの大公の、だれ/\のお祝ひで、ドイツ人にも祭日なので、かへつて来たのだと、こしらへごとを言つたのです。それでヘナンやおかみさんたちは、ガスパールのかへつたのを祝つてゐるところだつたのです。
 ガスパールは、クロック先生が来たと知ると、かはいさうに、どこかににげ
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