源八栗
沖野岩三郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)藤六《とうろく》さんは、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)Gempachi《ゲンパチ》−|Kuri《クリ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)げんぱち[#「げんぱち」に傍点]といふ、
−−

    一
 もうりい博士は、みなとの汽船会社から、こまりきつたかほをして、かへつて来ました。それは、午後一時に、出るはずの汽船が、四時にのびたからです。
 もうりい博士は今晩の八時から、次の町でお話をする、やくそくをしてあるのです。だから、四時のおふねにのつては、十時すぎにしか、次の町へつくことが出来ないのです。
 ふねにのらないとすれば、三十きろのみちを、あるかなければなりません。しかも、そのみちといふのは、けはしい、けはしい山みちです。
 やくそくを、だいじに思ふ博士は、そのけはしい、山坂をこえて、次の町へ、あるいて行くことに、決心しました。
 博士は、自てん車をもつてゐました。で、それにのつて行きましたが、わづかばかり行きますと、もう、みちがけはしくなつて、自
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