りつけて、中将と二人で、さも重さうに、よいしよ、よいしよと、掛声をして、それを、皇子さまの前に持つて来て、据《す》ゑました。が、それを御らんになつた皇子さまは、
「川にあつたのは、もつと大きな岩だつた。こんな、ちつぽけな岩ではなかつた。」と、申されました。すると、民部大輔は、
「あの大きな岩が、こんなに小く、なつてしまつたのでございます。」と、真面目《まじめ》な顔付で申し上げますと、
「どうして、そんなに、小さくなつたのか。そのわけを、おはなし。」と、皇子さまは、小いお膝《ひざ》を、お進めになりました。
「あの川岸にありました、大きな岩を、私が両手に力をこめて、うんと担ぎ上げ、山路《やまみち》を登つてまゐりましたが、途中で、右と左から、山と山との、さし出た所で、岩が両方の岸に、がつちり、挟《はさ》まつてしまひましたのでございます。」
「うん、あの山と山との間は、狭いから、岩が引つかかつたかも知れない。それからどうしたのだ。」
「はい。此の民部大輔、非常に困つてゐますと、後《うしろ》から大きな声で、何だつて、こんな所へ、大きな岩なんか、担ぎ込んだのだ。途《みち》が塞《ふさ》がつて、誰《た
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