ばべるの塔
沖野岩三郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)私《わたし》どもは、
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 まだ、電話も電信も、なんにもない、五六千年も、まへのおはなしです。
 ひろいひろい、のはらを、みつけた男がありました。あまり、けしきがよいので、そのまんなかに、一けんの家を、たてました。すると、いつのまにか、われもわれもと、そこへ、何十万の人が、あつまつて来て、五六年めには、たいへん大きな、町になつて、しまひました。
 ところが、ここへ、あつまつてきた、人たちは、男も女も、みんな、正直ものばかりで、まいにち、よくはたらいて、
「おい、正直にしろよ。かげで、なまけちや、いけねえぞ。おてんたうさまが、見てゐらつしやるから。」と、いつてゐました。だから、この町の人たちは、だれ一人、うそをつくものもなく、それはそれは、かんしんに、仲よく、はたらいてゐました。
 ある年の春、この町へ、二人の、りつぱな、みなりをした、男がきました。そして、この二人は、町の役所に行つて、こんなことを、まうしました。
「私《わたし》どもは、世界で一ばんえらい、かしこい男です。私どもは、れんぐわと、せ
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