きでゝもあらうと思はれる、そのうちに岸を打つ波がバシヤリ、バシヤリと一仕切り騷ぐと、さあこんだ乘つてもいゝといふのでさきの舟へ漕ぎつけた、舟のなかには三人の男が居たが自分等がついたので、みんな艫の方へ堅まつた、「こん夜はお客さま案内してきたといひながら叔父がさきへ乘り移る、舳の方へ漸く四人が座つた、この舟もやつぱりサツパ舟であるから八人の乘合では隨分窮屈である、それに苫が切つてあるのだから頭から押へ付けられるやうな心持で何だか落付かないで居ると、「どうですサヤ立てるの見ませんかといはれて、何をするのか分らないが見たいといふと、「それぢやこれへお乘んなせえといはれてさつきの舟へ乘る、こんどは二人で漕ぎ出した、一人はずんぐりした男で一人はさつきの奴である、さうしてそれはもうよつぽどの爺さんであつた、舟は再び岸の方へつけられた、一人が陸へ上つて竹棒の束へ繩をくるんだやうなものを抱いてきた、舟はすぐに遙かの下手へ漕ぎくだつて行つた、河のおもての白々ひかりで見ると、そこには苫舟の傍から末になる程開くやうに二筋に竹の棒が建てならべてある、丁度八の字髭が生へたやうなものだ、その右の方に舟を止めたと思
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