いはれて居《ゐ》るので卯平《うへい》が腰《こし》を惱《なや》んで居《ゐ》るのを稀《まれ》には猫《ねこ》の祟《たゝり》だと戯談《じようだん》にいふものもあつた。それでもさういふ噂《うはさ》は擴《ひろ》がらなかつた。彼《かれ》は憎惡《ぞうを》と嫉妬《しつと》とを村落《むら》の誰《たれ》からも買《か》はなかつた。憎惡《ぞうを》も嫉妬《しつと》もない其處《そこ》に故意《わざ》と惡評《あくひやう》を生《う》み出《だ》す程《ほど》百姓《ひやくしやう》は邪心《じやしん》を有《も》つて居《ゐ》なかつた。村落《むら》の西端《せいたん》に僻在《へきざい》して居《ゐ》る彼《かれ》には興味《きようみ》を以《もつ》て見《み》させる一《ひと》つの條件《でうけん》も具《そな》へて居《ゐ》なかつた。只《たゞ》むつゝりとして他人《たにん》に訴《うつた》へることも求《もと》めることもない彼《かれ》は一|切《さい》村落《むら》との交渉《かうせふ》がなかつた。彼《かれ》の一|身《しん》の有無《うむ》は少《すこ》しも村落《むら》の爲《ため》には輕重《けいちよう》する處《ところ》がなかつた。

         二五

 初冬《
前へ 次へ
全956ページ中824ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング