よこ》になつた。先刻《さつき》から疲勞《ひらう》したやうな心持《こゝろもち》に成《な》つて居《ゐ》たが横《よこ》になると身體《からだ》が溶《と》けるやうにぐつたりして微《かす》かに快《こゝろ》よかつた。
其《そ》の晩《ばん》一|年中《ねんぢう》の臟腑《ざうふ》の砂拂《すなはらひ》だといふ冬至《とうじ》の蒟蒻《こんにやく》を皆《みんな》で喰《た》べた。お品《しな》は喰《そ》の日《ひ》は明日《あす》からでも起《お》きられるやうに思《おも》つて居《ゐ》た。さうして勘次《かんじ》は仕事《しごと》の埓《らち》が明《あ》いたので又《また》利根川《とねがは》へ行《ゆ》かれることゝ心《こゝろ》に期《き》して居《ゐ》た。
四
お品《しな》の容態《ようだい》は其《そ》の夜《よ》から激變《げきへん》した。勘次《かんじ》が漸《やうや》く眠《ねむり》に落《お》ちた時《とき》お品《しな》は
「口《くち》が開《あ》けなく成《な》つて仕《し》やうねえよう」と情《なさけ》ない聲《こゑ》でいつた。お品《しな》は顎《あご》が釘附《くきづけ》にされたやうに成《な》つて、唾《つば》を飮《の》むにも喉《
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