狹《せま》い小屋《こや》の中《なか》で覗《のぞ》く叺《かます》の底《そこ》は闇《くら》かつた。僅《わづ》かに交《まじ》つた小《ちひ》さな白《しろ》い銀貨《ぎんくわ》が見《み》る度《たび》に彼《かれ》の心《こゝろ》に幾《いく》らかの光《ひかり》を與《あた》へた。彼《かれ》が什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》に惜《をし》んでも叺《かます》の中《なか》の減《へ》つて行《ゆ》くのを防《ふせ》ぐことは出來《でき》ない。然《しか》も寡言《むくち》な彼《かれ》は徒《いたづ》らに自分《じぶん》獨《ひとり》が噛《か》みしめて、絶《た》えず只《たゞ》憔悴《せうすゐ》しつゝ沈鬱《ちんうつ》の状態《じやうたい》を持續《ぢぞく》した。彼《かれ》は其《その》状態《じやうたい》を保《たも》つて念佛寮《ねんぶつれう》の圍爐裏《ゐろり》にどつかと懶《ものう》い身體《からだ》を据《す》ゑて居《ゐ》た。
 庭《には》の騷《さわ》ぎは止《や》んで疾風《しつぷう》の襲《おそ》うた如《ごと》く寮《れう》の内《うち》は復《また》雜然《ざつぜん》として卯平《うへい》を圍《かこ》
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