の隙間《すきま》に小《ちひ》さな麥畑《むぎばたけ》があつた。麥畑《むぎばたけ》の畝《うね》は大抵《たいてい》東西《とうざい》に形《かたち》づけられてあつた。遠《とほ》くから南《みなみ》へ廻《まは》らうとして居《ゐ》る日《ひ》は思《おも》ひの外《ほか》に暖《あたゝ》かい光《ひかり》で一|帶《たい》に霜《しも》を溶《と》かしたので、何處《どこ》でも水《みづ》を打《う》つたやうな濕《うるほ》ひを持《も》つて居《ゐ》た。然《しか》し薄《うす》い日《ひ》の光《ひかり》は畑《はたけ》の畝《うね》が形《かたち》づくつて居《ゐ》る長《なが》い小山《こやま》の頂點《ちやうてん》を越《こ》えて幾《いく》らも其《そ》の力《ちから》を及《およ》ぼさなかつた。どの畝《うね》でも其《その》陰《かげ》は依然《いぜん》として白《しろ》かつた。卯平《うへい》は田圃《たんぼ》に從《つ》いて北側《きたがは》の道《みち》を歩《ある》いたので彼《かれ》の目《め》には悉《こと/″\》く夜明《よあけ》の如《ごと》き白《しろ》い冷《つめ》たい霜《しも》を以《もつ》て掩《おほ》はれて居《ゐ》る畑《はたけ》のみが映《うつ》つた。
午後
前へ
次へ
全956ページ中751ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング