》に近《ちか》づいた。表《おもて》の大戸《おほど》には錠《ぢやう》がおろしてあつた。鍵《かぎ》は固《もと》より勘次《かんじ》の腰《こし》を離《はな》れないことを知《し》つて卯平《うへい》は手《て》も掛《か》けて見《み》なかつた。彼《かれ》は又《また》裏戸《うらど》の口《くち》へ行《い》つて見《み》たが、掛金《かけがね》には栓《せん》を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《さ》したと見《み》えて動《うご》かなかつた。卯平《うへい》はそれから懷手《ふところで》をした儘《まゝ》其《そ》の癖《くせ》の舌《した》を鳴《な》らしながら悠長《いうちやう》に自分《じぶん》の狹《せま》い戸口《とぐち》に立《た》つた。内《うち》は只《たゞ》陰氣《いんき》で出《で》る時《とき》に端《はし》を捲《まく》つた夜具《やぐ》も冷《つめ》たく成《な》つて居《ゐ》た。彼《かれ》は漸《やうや》く火鉢《ひばち》に麁朶《そだ》を燻《くべ》た。彼《かれ》は側《そば》に重箱《ぢゆうばこ》と小鍋《こなべ》とが置《お》かれてあるのを見《み》た。蓋《ふた》をとつたら重箱《ぢゆうばこ》には飯《めし》が
前へ
次へ
全956ページ中743ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング