ら》の木《き》の中《なか》へ鳴《な》き込《こ》んだ。他《た》の鷄《にはとり》も一しきり共《とも》に喧《やかま》しく鳴《な》いた。おつぎは手《て》を延《の》ばしては卵《たまご》を一つ/\に取《と》つて袂《たもと》へ入《い》れた。おつぎは袂《たもと》をぶら/\させて危相《あぶなさう》に米俵《こめだはら》を降《お》りた。其處《そこ》にも卵《たまご》は六つばかりあつた。商人《あきんど》は卸《おろ》した四|角《かく》なぼて笊《ざる》から眞鍮《しんちう》の皿《さら》と鍵《かぎ》が吊《つる》された秤《はかり》を出《だ》した。
「掛《かけ》は幾《いく》らだね」お品《しな》は聞《き》いた。
「十一|半《はん》さ、近頃《ちかごろ》どうも安《やす》くつてな」商人《あきんど》はいひながら淺《あさ》い目笊《めざる》へ卵《たまご》を入《い》れて萠黄《もえぎ》の紐《ひも》のたどり[#「たどり」に傍点]を持《も》つて秤《はかり》の棹《さを》を目《め》八|分《ぶ》にして、さうして分銅《ふんどう》の絲《いと》をぎつと抑《おさ》へた儘《まゝ》銀色《ぎんいろ》の目《め》を數《かぞ》へた。玩具《おもちや》のやうな小《ちひ》さな
前へ
次へ
全956ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング