え》で癒《なほ》つたもんでござんせうね、先生《せんせい》さん」百姓《ひやくしやう》は懸念《けねん》らしく聞《き》いた。
「さう直《す》ぐにや癒《なほ》らねえな」醫者《いしや》は無愛想《ぶあいそ》にいつた。百姓《ひやくしやう》は依然《いぜん》として蒼《あを》い顏《かほ》をしながら怪我人《けがにん》を脊負《しよ》つて歸《かへ》つて行《い》つた。それから二三|人《にん》の療治《れうぢ》が濟《す》んで勘次《かんじ》の番《ばん》に成《な》つた。
「此《こ》りや大層《たいそう》大事《だいじ》にしてあるな」醫者《いしや》は穢《きたな》い手拭《てぬぐひ》をとつて勘次《かんじ》の肘《ひぢ》を見《み》た。鐵《てつ》の火箸《ひばし》で打《う》つた趾《あと》が指《ゆび》の如《ごと》くほのかに膨《ふく》れて居《ゐ》た。
「どうしたんだえ此《こ》ら、夫婦喧嘩《ふうふげんくわ》でもしたか」醫者《いしや》は毎日《まいにち》百姓《ひやくしやう》を相手《あひて》にして碎《くだ》けて交際《つきあ》ふ習慣《しふくわん》がついて居《ゐ》るので、どつしりと大《おほ》きな身體《からだ》からかういふ戯談《じようだん》も出《で》るので
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