ん》に加《くは》はることは出來《でき》ないのであつた。百姓《ひやくしやう》は泣《な》けば泣《な》く程《ほど》手《て》を緩《ゆる》めた。醫者《いしや》はそれで徒勞《むだ》だといつた。百姓《ひやくしやう》は只《たゞ》蒼《あを》い顏《かほ》をしてぼつとして居《ゐ》るのみであつた。
 醫者《いしや》は更《さら》に家族《かぞく》に命《めい》じて近所《きんじよ》の壯者《わかもの》を喚《よ》びにやつた。
「木《き》から落《おつこ》つたな」醫者《いしや》は百姓《ひやくしやう》に聞《き》いた。
「えゝ、わしやはあ、どうしてえゝもんだか分《わか》んねえから畑《はたけ》耕《うな》つてた儘《まゝ》衣物《きもの》も着《き》ねえで斯《か》うして負《おぶ》つて來《き》たんだが」と百姓《ひやくしやう》はいつて、それから
「わし※[#「柿」の正字、第3水準1−85−57]《かき》の木《き》さ登《のぼ》んな見《み》てたんだつけが、落《おつこ》つたから驅《か》けてつて見《み》たら、目《めえ》引《ひ》つゝけつちやつて、そんでも暫《しばら》く經《た》つたら泣《な》き出《だ》したんでわし抱《だ》き起《おこ》して手《て》へ觸《さは
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