株《かりかぶ》を叮嚀《ていねい》に草鞋《わらぢ》の先《さき》で蹂《ふ》んで見《み》た。百姓《ひやくしやう》がちらほらと動《うご》いて麥《むぎ》を蒔《ま》くべき土《つち》が清潔《せいけつ》に耕《たがや》されつゝある。畑《はたけ》の黒《くろ》い土《つち》は彼等《かれら》の技巧《ぎかう》を發揮《はつき》して叮嚀《ていねい》に耕《たがや》されゝば日《ひ》がまだそれを乾《ほ》さない内《うち》は只《たゞ》清潔《せいけつ》で快《こゝろ》よい感《かん》じを見《み》る人《ひと》の心《こゝろ》に與《あた》へるのである。
さういふ村落《むら》を包《つゝ》んで其處《そこ》にも雜木林《ざふきばやし》が一|帶《たい》に赭《あか》くなつて居《ゐ》る。他《た》に先立《さきだ》つて際《きは》どく燃《も》えるやうになつた白膠木《ぬるで》の葉《は》が黒《くろ》い土《つち》と遠《とほ》く相《あひ》映《えい》じて居《ゐ》る。勘次《かんじ》は自分《じぶん》の麥《むぎ》を蒔《ま》くべき畑《はたけ》の用意《ようい》がまだ十|分《ぶん》でないことを思《おも》つた。彼《かれ》は前年《ぜんねん》寒《さむ》さが急《きふ》に襲《おそ》うた時
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