んだ。米《こめ》には赤《あか》い粒《つぶ》もあつたが籾《あら》が少《すこ》し交《まじ》つて居《ゐ》てそれが目《め》に立《た》つた。
「籾《あら》が少《すこ》したかゝつたな[#「たかゝつたな」に傍点]」勘次《かんじ》はふとさういつた。
「さうだつけかな、それでも俺《お》ら唐箕《たうみ》は強《つよ》く立《た》てた積《つもり》なんだがなよ、今年《ことし》は赤《あか》も夥多《しつかり》だが磨臼《するす》の切《き》れ方《かた》もどういふもんだか惡《わり》いんだよ」とお品《しな》は少《すこ》し身《み》を動《うご》かして分疏《いひわけ》するやうにいつた。
「尤《もつと》も此《この》位《くれえ》ぢや旦那《だんな》も大目《おほめ》に見《み》てくれべえから心配《しんぺえ》はあんめえがなよ」勘次《かんじ》は直《すぐ》にお品《しな》の病氣《びやうき》に心付《こゝろづ》いて恁《か》ういつた。壁際《かべぎは》には藁《わら》の器用《きよう》な俵《たはら》が規則正《きそくたゞ》しく積《つ》み換《かへ》られた。お品《しな》はそれを一|心《しん》に見《み》た。それもお品《しな》を快《こゝろ》よくする一《ひと》つであつた。
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