とき》から彼《かれ》には心掛《こころがか》りであつた。すぐつた藁《わら》も繩《なは》も別《べつ》に取《と》つて置《お》きながら只《たゞ》忙《せは》しくて放棄《うつちや》つて出《で》て行《い》つたのである。
お品《しな》は毎日《まいにち》閉《し》め切《き》つて居《ゐ》た表《おもて》の雨戸《あまど》を一|枚《まい》だけ開《あ》けさせた。からりとした蒼《あを》い空《そら》が見《み》えて日《ひ》が自分《じぶん》の居《ゐ》る蒲團《ふとん》に近《ちか》くまで偃《は》つた。お品《しな》は此《こ》れまでは明《あか》るい外《そと》を見《み》ようと思《おも》ふには餘《あま》りに心《こゝろ》が鬱《うつ》して居《ゐ》た。お品《しな》は庭先《にはさき》の栗《くり》の木《き》から垂《た》れた大根《だいこ》が褐色《かつしよく》に干《ひ》て居《ゐ》るのを見《み》た。おつぎも勘次《かんじ》の横《よこ》へ筵《むしろ》を敷《し》いて又《また》大根《だいこ》を切《き》つて居《ゐ》る。其《その》庖丁《はうちやう》のとん/\と鳴《な》る間《あひだ》に忙《せは》しく八人坊主《はちにんばうず》を動《うご》かしてはさらさらと藁《わら
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