あた》はぬ程《ほど》忽《たちま》ちに空腹《くうふく》を感《かん》じて畢《しま》ふからである。隨《したが》つて孰《いづ》れの家庭《かてい》に在《あ》つても老者《らうしや》と壯者《さうしや》との間《あひだ》には此《こ》の點《てん》の調和《てうわ》が難事《なんじ》である。然《しか》し卯平《うへい》は老衰《らうすゐ》の身《み》を漸《やうや》くのことで投《な》げ掛《か》けた心《こゝろ》の底《そこ》に蟠《わだかま》つた遠慮《ゑんりよ》と性來《せいらい》の寡言《むくち》とで、自分《じぶん》から要求《えうきう》することは寸毫《すんがう》もなかつた。彼《かれ》は只《たゞ》空腹《くうふく》を凌《しの》ぐ爲《ため》に日毎《ひごと》に不味《まづ》い口《くち》を強《し》ひて動《うご》かしつゝあるのである。疎惡《そあく》な食料《しよくれう》は少時《せうじ》からおつぎの目《め》にも口《くち》にも熟《じゆく》して居《ゐ》るので、其處《そこ》には何《なん》の心《こゝろ》も附《つ》かなかつた。不味相《まづさう》な容子《ようす》をして箸《はし》を執《と》るのは卯平《うへい》が凡《すべ》ての場合《ばあひ》を通《つう》じての状
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