に成《な》つて居《ゐ》てそれほど汚穢《むさ》い感《かん》じは與《あた》へられなかつた。彼《かれ》は今《いま》熾《さかん》な暑《あつ》い日《ひ》を仰《あふ》いだ目《め》を放《はな》つて俄《にはか》に物陰《ものかげ》を探《さが》さうとするものゝやうに酷《ひど》く勝手《かつて》が違《ちが》つたのである。
 彼《かれ》は暫《しばら》く好《すき》な煙草《たばこ》に屈託《くつたく》して居《ゐ》たが漸《やうや》く日《ひ》が暖《あたゝか》く成《な》り掛《か》けたので、稀《まれ》に生存《せいぞん》して居《ゐ》る往年《わうねん》の朋輩《ほうばい》や近所《きんじよ》への義理《ぎり》かた/″\顏《かほ》を出《だ》す積《つもり》で外《そと》へ出《で》た。勘次《かんじ》とおつぎとが晝餐《ひる》に歸《かへ》つて來《き》た時《とき》に卯平《うへい》は居《ゐ》なかつた。彼《かれ》は夜《よる》に成《な》つてのつそりと戸口《とぐち》に立《た》つた。勘次《かんじ》が庭《には》へ出《で》ようとして大戸《おほど》をがらりと開《あ》けた時《とき》卯平《うへい》と衝突《つきあた》り相《さう》に成《な》つた。勘次《かんじ》は足《あし》
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