ほ》しいつちんだら出《だ》して遣《や》れえ」彼《かれ》はいつた。おつぎは戸棚《とだな》から煎餅《せんべい》を一|枚《まい》出《だ》して與吉《よきち》へ渡《わた》した。與吉《よきち》はすつと奪《うば》ふ樣《やう》にして取《と》つた。
「しらばつくれて」おつぎは斜《なゝめ》に脊負《せお》つた書藉《しよせき》の上《うへ》から與吉《よきち》をぱたと叩《たゝ》いた。與吉《よきち》は霜《しも》の白《しろ》く掩《おほう》た庭《には》を小《ちひ》さな下駄《げた》でから/\と鳴《な》らしながら遁《に》げるやうに駈《か》けて行《い》つた。卯平《うへい》は窪《くぼ》んだ目《め》を蹙《しが》めて一|種《しゆ》の暖《あたゝ》かな表情《へうじやう》を示《しめ》して與吉《よきち》の後姿《うしろすがた》を見《み》た。勘次《かんじ》は割《わ》つた薪《まき》を草刈籠《くさかりかご》へ入《い》れて竈《かまど》の前《まへ》へ置《お》いて朝餉《あさげ》の膳《ぜん》に向《むか》つて、一|碗《わん》を盛《も》つた。おつぎは氣《き》がついた樣《やう》に
「爺《ぢい》こと起《おこ》すべか」といつて勘次《かんじ》が返辭《へんじ》せぬ内《
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