「爺《ぢい》げお茶《ちや》入《せ》えべえ」おつぎは立《た》つて茶碗《ちやわん》を洗《あら》つた。卯平《うへい》は濃霧《のうむ》に塞《ふさ》がれた森《もり》の中《なか》へ踏込《ふみこ》むやうな一|種《しゆ》の不安《ふあん》を感《かん》じつゝ來《き》たのであつたが、彼《かれ》はおつぎの仕打《しうち》に心《こゝろ》が晴々《せい/\》した。卯平《うへい》は、まだ菓子《くわし》を舐《しやぶ》りながら隱《かく》れるやうにして居《ゐ》る與吉《よきち》を見《み》て
「俺《お》れこと忘《わす》れたんべ此《こ》ら、大《え》かく成《な》つたと思《おも》つて來《き》たつけが本當《ほんたう》に分《わか》んねえ程《ほど》大《え》かく成《な》つたな」寡言《むくち》な卯平《うへい》が此《こ》の夜《よ》は種々《いろ/\》に饒舌《しやべ》つた。
「此《こ》んでも學校《がくかう》へ行《い》くんだもの」おつぎは茶《ちや》を入《い》れながらいつた。
「さうら」と卯平《うへい》は荷物《にもつ》へ縛《しば》りつけた煎餅《せんべい》の包《つゝみ》を與吉《よきち》へ投《な》げ出《だ》してやつた。
「おつう、手拭《てねげ》解《と》え
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