《たゞ》默《だま》つてゝえゝんだつけかな」といふと
「えゝんだよそんで、自分《じぶん》の思《おも》つてたの出《で》て來《く》んだから」
「かんぜん撚《より》拵《こせ》えて水《みづ》掻《か》ん廻《まあ》せば、えゝんだよ」側《そば》から巫女《くちよせ》の婆《ばあ》さんのいふのも待《ま》たずに口《くち》を出《だ》した。
「三|度《と》でえゝんだつけかな」婆《ばあ》さんの前《まへ》へ坐《すわ》つた一人《ひとり》は後《うしろ》の方《はう》を向《む》いていつて彼《かれ》は不器用《ぶきよう》な紙捻《こより》を拵《こしら》へて其《そ》の先《さき》を茶碗《ちやわん》の水《みづ》へ浸《ひた》して三|度《ど》丁寧《ていねい》に掻《か》き廻《まは》して其《そ》の儘《まゝ》紙捻《こより》を水《みづ》に浸《ひた》して置《お》いた。
「見《み》ろよ、近頃《ちかごろ》薩張《さつぱり》來《き》てくんねえが、俺《お》れこと厭《や》にでも成《な》つたんぢやねえかなんて出《で》つから」と店《みせ》の女房《にようばう》は戯談《ぜうだん》を交《まじ》へた。
巫女《くちよせ》は暫《しばら》く手《て》を合《あは》せて口《くち》の中
前へ
次へ
全956ページ中496ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング