になんざ出《だ》せねえよ、今《いま》ん處《ところ》俺《お》れ困《こま》つから」勘次《かんじ》はそつけなくいつた。
「不自由《ふじいう》な處《ところ》ありや出《だ》して、自分《じぶん》でも引《ひ》つ込《こ》むのよ」兼《かね》博勞《ばくらう》は遠慮《ゑんりよ》なくいつた。
「俺《お》らそんな噺《はなし》や聽《き》かねえ、貰《もら》ひたけりや幾《いく》らでも有《あ》らあ」勘次《かんじ》は斥《しりぞ》けた。
「そんだつておめえ、そつちこつち口《くち》掛《か》けて置《お》かねえぢや、直《ぢき》年齡《とし》ばかしとらせつちやつて仕《し》やうねえぞ、俺《お》らも一人《ひとり》出《だ》したがおめえ容易《ようい》ぢやねえよ、さうだかうだ云《ゆ》はれねえ内《うち》だぞおめえ」女房《にようばう》はいつた。
「えゝよ卅まで獨《ひと》りぢや置《お》かねえから此《こ》れげはいまに聟《むこ》とんだから」勘次《かんじ》は喧嘩《けんくわ》でもする樣《やう》な容子《ようす》で硬《こは》ばつた舌《した》でいつた。女房《にようばう》は默《だま》つて口《くち》の邊《あたり》に冷《ひやゝ》かな笑《ゑみ》を含《ふく》んで膝《ひざ》
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