な、蜀黍《もろこし》なんぞ何處《どこ》へ隱《かく》せるもんぢやねえ」
抔《など》と近《ちか》い畑同士《はたけどうし》は呶鳴《どな》り合《あ》つた。其《そ》の聲《こゑ》は被害者《ひがいしや》の耳《みゝ》にも這入《はひ》つてむか/\と激《げき》した其《そ》の心《こゝろ》に勢《いきほ》ひを附《つ》けた。
「數《かず》が分《わか》つたらもう後《あと》へ手《て》を附《つ》けてもえゝ」巡査《じゆんさ》は畑《はたけ》を去《さ》つた。
「わしも行《い》つて見《み》あんせう、自分《じぶん》の畑《はたけ》のがは一目《ひとめ》見《み》りや分《わか》りあんすから」恁《か》ういつて被害者《ひがいしや》は蜀黍《もろこし》の穗《ほ》を二三|本《ぼん》持《も》つて村落《むら》へ戻《もど》つた。巡査《じゆんさ》は其處《そこ》ら此處《ここ》らと二三|軒《げん》見《み》て歩《ある》いて勘次《かんじ》の庭《には》へ立《た》つた。それは勘次《かんじ》は二三の者《もの》と共《とも》に巡査《じゆんさ》の注意人物《ちういじんぶつ》であつたからである。然《しか》し彼《かれ》の貧《まづ》しい建物《たてもの》の何處《どこ》にも隱匿《いんと
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