》れたばかりに直《すぐ》に竈《かまど》を別《べつ》にして、不見目《みじめ》な生計《くらし》をしたので當時《たうじ》は晴《はれ》の衣物《きもの》であつた其《そ》の單衣《ひとへ》に身《み》を包《つゝ》んで見《み》る機會《きくわい》もなく空《むな》しく藏《しま》つた儘《まゝ》になつて居《ゐ》たのである。それに其《そ》の頃《ころ》は紺《こん》が七日《なぬか》からも經《た》たねば沸《わか》ないやうな藍瓶《あゐがめ》で染《そめ》られたので、今《いま》の普通《ふつう》の反物《たんもの》のやうな水《みづ》で落《お》ちないかと思《おも》へば日《ひ》に褪《さ》めるといふのではなく、勘次《かんじ》がいつたやうに洗濯《せんたく》しても却《かへつ》て冴《さ》えるやうなので、それに地質《ぢしつ》もしつかりと丈夫《ぢやうぶ》なものであつた。おつぎが洗《あら》ひ曝《ざら》しの袷《あはせ》を棄《す》てゝ辨慶縞《べんけいじま》の單衣《ひとへ》で出《で》るやうに成《な》つてからは一際《ひときは》人《ひと》の注目《ちうもく》を惹《ひ》いた。例《れい》の赤《あか》い襷《たすき》が後《うしろ》で交叉《かうさ》して袖《そで》を短《
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