る機會《きくわい》を有《も》たなかつた。おつぎはどうといふこともなく寧《むし》ろ殆《ほとん》ど無意識《むいしき》に行《ゆ》き交《か》ふ青年《せいねん》を見《み》るのであつたが、手拭《てぬぐひ》の下《した》に光《ひか》る暖《あたゝ》かい二《ふた》つの瞳《ひとみ》には情《じやう》を含《ふく》んで居《ゐ》ることが青年等《せいねんら》の目《め》にも微妙《びめう》に感應《かんおう》した。恁《か》うしておつぎもいつか口《くち》の端《は》に上《のば》つたのである。それでも到底《たうてい》青年《せいねん》がおつぎと相《あひ》接《せつ》するのは勘次《かんじ》の監督《かんとく》の下《もと》に白晝《はくちう》往來《わうらい》で一|瞥《べつ》して行《ゆ》き違《ちが》ふ其《その》瞬間《しゆんかん》に限《かぎ》られて居《ゐ》た。それ故《ゆゑ》一|般《ぱん》の子女《しぢよ》のやうではなくおつぎの心《こゝろ》にも男《をとこ》に對《たい》する恐怖《きようふ》の幕《まく》を無理《むり》に引拂《ひきはら》はれる機會《きくわい》が嘗《かつ》て一度《ひとたび》も與《あた》へられなかつた。おつぎは往來《わうらい》を行《ゆ》くとて
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