や、そんな餘計《よけい》なもの何《なん》になるもんぢやねえ」勘次《かんじ》は反覆《くりかへ》して叱《しか》つた。與吉《よきち》はおつぎの陰《かげ》へ廻《まは》つて抱《だ》きついた。
「どうしたもんだんべまあ、ぢつき怒《おこ》んだから」おつぎは小言《こごと》を聞《き》いて呟《つぶや》いた。
「そんだつて、おとつゝあ等《ら》そんな處《とこ》ぢやねえから」勘次《かんじ》はがつかり聲《こゑ》を落《おと》していつた。さうして沈默《ちんもく》した。
 おつぎもお品《しな》が死《し》んでから苦《くる》しい生活《せいくわつ》の間《あひだ》に二たび春《はる》を迎《むか》へた。おつぎは餘儀《よぎ》なくされつゝ生活《せいくわつ》の壓迫《あつぱく》に對《たい》する抵抗力《ていかうりよく》を促進《そくしん》した。餘所《よそ》の女《をんな》の子《こ》のやうに長閑《のどか》な春《はる》は知《し》られないでおつぎは生理上《せいりじやう》にも著《いちじ》るしい變化《へんくわ》を遂《と》げた。お品《しな》が死《し》んだ時《とき》はおつぎはまだ落葉《おちば》を燻《く》べるとては竹《たけ》の火箸《ひばし》の先《さき》を直《す
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