つ》いた。勘次《かんじ》も其《そ》の一人《ひとり》である。
 勘次《かんじ》は春《はる》の間《あひだ》にお品《しな》の四十九|日《にち》も過《すご》した。白木《しらき》の位牌《ゐはい》に心《こゝろ》ばかりの手向《たむけ》をしただけで一|錢《せん》でも彼《かれ》は冗費《じようひ》を怖《おそ》れた。彼《かれ》が再《ふたゝ》び利根川《とねがは》の工事《こうじ》へ行《い》つた時《とき》は冬《ふゆ》は漸《やうや》く險惡《けんあく》な空《そら》を彼等《かれら》の頭上《づじやう》に表《あら》はした。霙《みぞれ》や雪《ゆき》や雨《あめ》が時《とき》として彼等《かれら》の勞働《らうどう》に怖《おそ》るべき障害《しやうがい》を與《あた》へて彼等《かれら》を一|日《にち》其《その》寒《さむ》い部屋《へや》に閉《と》ぢ込《こ》めた。一|日《にち》の工賃《こうちん》は非常《ひじやう》な節約《せつやく》をしても次《つぎ》の日《ひ》に仕事《しごと》に出《で》なければ一|錢《せん》も自分《じぶん》の手《て》には残《のこ》らなくなる。それは食料《しよくれう》と薪《まき》との不廉《ふれん》な供給《きようきふ》を仰《あふ》
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