ほ》く且《かつ》遙《はるか》に響《ひゞ》くかを矜《ほこ》るものゝ如《ごと》く力《ちから》を極《きは》めて鳴《な》く。雨戸《あまど》を閉《と》づる時《とき》蛙《かへる》の聲《こゑ》は滅切《めつきり》遠《とほ》く隔《へだ》つてそれがぐつたりと疲《つか》れた耳《みゝ》を擽《くすぐ》つて百姓《ひやくしやう》の凡《すべ》てを安《やす》らかな眠《ねむ》りに誘《いざな》ふのである。熟睡《じゆくすゐ》することによつて百姓《ひやくしやう》は皆《みな》短《みじか》い時間《じかん》に肉體《にくたい》の消耗《せうまう》を恢復《くわいふく》する。彼等《かれら》が雨戸《あまど》の隙間《すきま》から射《さ》す夜明《よあけ》の白《しろ》い光《ひかり》に驚《おどろ》いて蒲團《ふとん》を蹴《け》つて外《そと》に出《で》ると、今更《いまさら》のやうに耳《みゝ》に迫《せま》る蛙《かへる》の聲《こゑ》に其《そ》の覺醒《かくせい》を促《うなが》されて、井戸端《ゐどばた》の冷《つめ》たい水《みづ》に全《まつた》く朝《あさ》の元氣《げんき》を喚《よ》び返《かへ》すのである。草木《くさき》は遠《とほ》く遙《はるか》に響《ひゞ》けと鳴《
前へ 次へ
全956ページ中155ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング