して遮《さへぎ》つて居《ゐ》る密樹《みつじゆ》の梢《こずゑ》を透《とほ》してどこからか日《ひ》が地上《ちじやう》に光《ひかり》を投《な》げて居《ゐ》るやうなものであつた。彼等《かれら》の心《こゝろ》は唯《たゞ》明《あか》るかつたのである。
 お品《しな》は十九の春《はる》に懷胎《くわいたい》した。自分《じぶん》でもそれは暫《しばら》く知《し》らずに居《ゐ》た。季節《きせつ》が段々《だん/\》ぽかついて、仕事《しごと》には單衣《ひとへもの》でなければならぬ頃《ころ》に成《な》つたので女同士《をんなどうし》の目《め》は隱《かく》しおほせないやうに成《な》つた。お袋《ふくろ》はお品《しな》をまだ子供《こども》のやうに思《おも》つて迂濶《うくわつ》にそれを心付《こゝろづ》かなかつた。本當《ほんたう》にさうだと思《おも》つた時《とき》はお品《しな》は間《ま》もなく肩《かた》で息《いき》するやうに成《な》つた。さうして身體《からだ》がもう棄《す》てゝ置《お》けない場合《ばあひ》に成《な》つたので兩方《りやうはう》の姻戚《みより》の者《もの》でごた/\と協議《けふぎ》が起《おこ》つた。勘次《かんじ》
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