て村中《むらぢう》へ義理《ぎり》に廻《まは》つた。土瓶《どびん》へ入《い》れた水《みづ》を持《も》つて墓參《はかまゐ》りに行《い》つて、それから膳椀《ぜんわん》も皆《みな》返《かへ》して近所《きんじよ》の人々《ひと/″\》も歸《かへ》つた後《のち》勘次《かんじ》は※[#「煢−冖」、第4水準2−79−80]然《けいぜん》として古《ふる》い机《つくゑ》の上《うへ》に置《お》かれた白木《しらき》の位牌《ゐはい》に對《たい》して堪《たま》らなく寂《さび》しい哀《あは》れつぽい心持《こゝろもち》になつた。二三|日《にち》の間《あひだ》は片口《かたくち》や摺鉢《すりばち》に入《い》れた葬式《さうしき》の時《とき》の残物《ざんぶつ》を喰《た》べて一|家《か》は只《たゞ》ばんやりとして暮《くら》した。雨戸《あまど》はいつものやうに引《ひ》いた儘《まゝ》で陰氣《いんき》であつた。卯平《うへい》を加《くは》へて四|人《にん》はお互《たがひ》が只《たゞ》冷《ひやゝ》かであつた。卯平《うへい》は其《そ》の薄暗《うすぐら》い家《うち》の中《なか》に只《たゞ》煙草《たばこ》を吹《ふ》かしては大《おほ》きな眞鍮《し
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