行《けつかう》するのには餘《あま》り大事《だいじ》であつたのである。さうしてそれは決定《けつてい》される機會《きくわい》もなくて夫婦《ふうふ》は依然《いぜん》として農事《のうじ》に忙殺《ばうさつ》されて居《ゐ》た。
其《そ》の間《あひだ》に空《そら》を渡《わた》る凩《こがらし》が俄《にはか》に哀《かな》しい音信《おどづれ》を齎《もたら》した。欅《けやき》の梢《こずゑ》は、どうでもう此《こ》れまでだといふやうに慌《あわたゞ》しく其《そ》の赭《あか》く成《な》つた枯葉《かれは》を地上《ちじやう》に投《な》げつけた。其《そ》の棄《す》て去《さ》られた輕《かろ》い小《ちひ》さな落葉《おちば》は、自分《じぶん》を引《ひ》き止《と》めて呉《く》れる蔭《かげ》を求《もと》めて轉々《ころ/\》と走《はし》つては干《ほ》した藁《わら》の間《あひだ》でも籾《もみ》の筵《むしろ》でも何處《どこ》でも其《そ》の身《み》を託《たく》した。周圍《あたり》は凡《すべ》てが只《たゞ》騷《さわ》がしく且《か》つ混雜《こんざつ》した。其《そ》の内《うち》に勘次《かんじ》は秋《あき》から募集《ぼしふ》のあつた開鑿工事《か
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