な、そんぢや先刻《さつき》藥《くすり》貼《は》つて貰《もら》あとこだつけな」おつぎは卯平《うへい》の手先《てさき》を手《て》にして見《み》た。
「こつちはそれ程《ほ》だひどかねえやそんでもなあ」おつぎは安心《あんしん》したやうにそつと手《て》を放《はな》した。
勘次《かんじ》は忙《いそが》しげな容子《ようす》をして歸《かへ》つた。彼《かれ》は蒲團《ふとん》を二三|枚《まい》疊《たゝ》んだ儘《まゝ》帶《おび》で脊負《しよ》つて來《き》た。
「どうしてえおとつゝあ、昨夜《ゆんべ》はそんでも寒《さむ》かなかつたつけゝえ」彼《かれ》は荷物《にもつ》を卯平《うへい》の裾《すそ》の方《はう》へ卸《おろ》して胸《むね》で結《むす》んだ帶《おび》を解《と》きながらいつた。
「熱《あつ》ぼつてえつて今《いま》蒲團《ふとん》一|枚《めえ》とつた處《ところ》なんだよ」おつぎは横合《よこあひ》からいつた。
「うむ、さうだ、此《こ》の蒲團《ふとん》は返《けえ》さなくつちやなんねえから」勘次《かんじ》は獨語《どくご》して
「どうしたおとつゝあ、藥《くすり》貼《は》つてちつたよかねえけ」彼《かれ》は復《また》白《しろ》い曝木綿《さらしもめん》を見《み》ていつた。
「うむ、枕《まくら》おつゝかるやうに成《な》つたからえゝこたえゝに」卯平《うへい》のいふのを聞《きい》て勘次《かんじ》は幾《いく》らか矜《ほこり》を以《もつ》て又《また》白《しろ》い木綿《もめん》を見《み》た。
「おとつゝあ、喫《た》べてえ物《もの》でもねえけえ、俺《お》ら明日《あした》川向《かはむかう》さ行《い》つて來《く》べと思《おも》ふんだ」勘次《かんじ》はまだ幾《いく》らか心《こゝろ》に蟠《わだかま》りがあるといふよりも、こそつぱい處《ところ》が取《と》れ切《き》らないやうで然《しか》も力《つと》めて機嫌《きげん》をとるやうな容子《ようす》であつた。
「うむ」と卯平《うへい》はいつて唾《つばき》をぐつと嚥《の》んだ。
「格別《かくべつ》はあ、喫《た》べてえつち物《もの》もねえが」彼《かれ》の目《め》には又《また》改《あらた》めて軟《やはら》かな光《ひかり》を有《も》つた。
「そんぢやおとつゝあ水飴《みづあめ》でも買《か》つて來《き》てやつたらよかつぺな、與吉《よき》げ隱《かく》して置《お》けば何《なん》でも有《あ》んめえな」お
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