次《かんじ》の目《め》には心丈夫《こゝろじやうぶ》であつた。彼《かれ》は自分《じぶん》の恐怖《おそれ》を誘《さそ》うた瘡痍《きず》が白《しろ》い快《こゝろ》よい布《ぬの》を以《もつ》て掩《おほ》ひ隱《かく》されたのと、自分《じぶん》の爲《す》べき仕事《しごと》を果《はた》し得《え》たやうに感《かん》ぜられるのとで心《こゝろ》が俄《にはか》に輕《かる》くすが/\しくなつた。卯平《うへい》もどうなることか確《しか》とは分《わか》らぬながら心《こゝろ》の内《うち》では悦《よろこ》んだ。
 勘次《かんじ》は又《また》何處《どこ》へか出《で》た。彼《かれ》は只《たゞ》心《こゝろ》がそは/\として容易《たやす》くは落《おち》つかなかつた。
 軟《やはら》かな春《はる》の光《ひかり》は情《なさけ》を含《ふく》んだ目《め》を瞬《またゝ》きしながら彼《かれ》の狹《せま》い小屋《こや》をこまやかに萱《かや》や篠《しの》の隙間《すきま》から覗《のぞ》いて卯平《うへい》の裾《すそ》にも偃《は》つた。卯平《うへい》は暫《しばら》く目《め》を瞑《つぶ》つた儘《まゝ》で居《ゐ》たが復《ま》たぱつちりと目《め》を開《あ》いた。側《そば》にはおつぎが坐《すわ》つて居《ゐ》た。
「おつう」と卯平《うへい》は低《ひく》い聲《こゑ》で喚《よ》んだ。
「何《なん》でえ」おつぎは又《また》耳《みゝ》へ口《くち》を當《あ》てた。卯平《うへい》は右《みぎ》の手《て》を出《だ》して蒲團《ふとん》の上《うへ》へ伸《のば》して
「熱《あつ》ぼつてえから一|枚《めえ》とつてくんねえか」力《ちから》ない縋《すが》るやうな聲《こゑ》でいつた。
「本當《ほんたう》に暖《ぬくと》く成《な》つたんだよなあ日輪《おてんとさま》まで酷《ひど》く眩《まちつ》ぽくなつたやうなんだよ」おつぎは例《れい》の少《すこ》し甘《あま》えるやうな口吻《くちつき》で一|枚《まい》の掛蒲團《かけぶとん》をとつた。
「此《こ》の蒲團《ふとん》は板《いた》ツ端《ぱち》見《み》てえなんだよなあ、此《こ》れとつた方《はう》が爺《ぢい》は輕《かる》く成《な》つてよかつぺなほんに、さう云《ゆ》つても暖《ぬくと》くなるつちやえゝもんだよ、俺《お》ら作日等《きのふら》見《み》てえぢやどうすべと思《おも》つたつきや」おつぎは掛蒲團《かけぶとん》を四《よ》つにして卯平《うへ
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