け》には行《ゆ》かなかつた。彼《かれ》は土間《どま》に轉《ころ》がつた下駄《げた》を探《さが》した。非常《ひじやう》な勢《いきほ》ひで積《つも》らうとする雪《ゆき》は、庭《には》から庭《には》を繼《つ》ぐ桑畑《くはばたけ》の間《あひだ》に下駄《げた》の運《はこ》びを鈍《にぶ》くした。彼《かれ》が勘次《かんじ》の小屋《こや》を覗《のぞ》いた時《とき》は低《ひく》く且《かつ》狹《せま》い入口《いりぐち》を自分《じぶん》の身體《からだ》が塞《ふさ》いで内《うち》を薄闇《うすぐら》くした。外《そと》の白《しろ》い雪《ゆき》を見《み》た彼《かれ》の目《め》が暫《しばら》く昏《くら》んだ。彼《かれ》は只《たゞ》勘次《かんじ》が與吉《よきち》を叱《しか》る聲《こゑ》を耳《みゝ》の傍《そば》で聞《き》いた。
勘次《かんじ》が歸《かへ》つた時《とき》卯平《うへい》は横《よこた》へた儘《まゝ》であつた。淺《あさ》く掛《かゝ》つて居《ゐ》た雪《ゆき》が溶《と》けて卯平《うへい》の褞袍《どてら》が少《すこ》し濡《ぬ》れて居《ゐ》た。彼《かれ》は復《ま》た糜爛《びらん》した火傷《やけど》を見《み》ると共《とも》に、卯平《うへい》の懷《ふところ》へ手《て》を入《い》れて居《ゐ》るおつぎを見《み》た。
「おとつゝあ、暖《ぬくて》えんだよ」おつぎはいつて又《また》
「呼吸《いき》つえてんだよ」他《た》を憚《はゞか》るものゝやうに低《ひく》く聲《こゑ》を殺《ころ》していつた。勘次《かんじ》は勢《いきほ》ひづいた。彼《かれ》は突然《とつぜん》與吉《よきち》を起《おこ》した。蒲團《ふとん》を捲《まく》つて與吉《よきち》の腕《うで》を引《ひ》いた。與吉《よきち》は例《いつも》にない苛酷《かこく》な扱《あつか》ひに驚《おどろ》いてまだ眠《ねむ》い目《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つた。
「急《かせ》えて、それ、衣物《きもの》」と勘次《かんじ》は只《たゞ》おろ/\して居《ゐ》る與吉《よきち》を叱《しか》りつけた。
「そんぢやまあよかつた。何《なに》しても蒲團《ふとん》へ寢《ね》かせた方《はう》がえゝな、暖《ぬくと》まりせえすりや段々《だん/\》よくなつぺから」南《みなみ》の亭主《ていしゆ》は數分時《すうふんじ》の前《まへ》から二人《ふたり》を衷心《ちうしん》より狼狽《らうばい》せし
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