んだから觸《さあ》つとがさ/\すんだよ」斯《か》ういつておつぎの聲《こゑ》は少《すこ》し明瞭《はつきり》として來《き》た。おつぎは羞《はぢ》を含《ふく》んだ容子《ようす》を作《つく》つた。卯平《うへい》は悲慘《みじめ》な燒小屋《やけごや》を思《おも》ふと、自分《じぶん》が與吉《よきち》と共《とも》に失錯《しくじ》つたことが自分《じぶん》を苦《くるし》めて酷《ひど》く辛《つら》かつた。彼《かれ》は俄《にはか》に目《め》を蹙《しか》めた。
「痛《いて》えのか」おつぎは目敏《めざと》くそれを見《み》て心《こゝろ》もとなげにいつた。おつぎは窶《やつ》れて沈《しづ》んだ卯平《うへい》の側《そば》に居《ゐ》ると、遂《つひ》自分《じぶん》も沈《しづ》んで畢《しま》つて只《たゞ》凝然《ぢつ》と悚《すく》んだやうに成《な》つて居《ゐ》るより外《ほか》はなかつた。それでもおつぎは長《なが》い時間《じかん》をさうして空《むな》しく費《つひや》すことは許容《ゆる》されなかつた。
「又《また》來《く》つかんな」とおつぎは沈《しづ》んだ聲《こゑ》でいつて出《で》て行《ゆ》くのを、後《あと》で卯平《うへい》の眥《めじり》からは涙《なみだ》が少《すこ》し洩《も》れて、其《そ》の小《ちひ》さな玉《たま》が暫《しばら》く窶《やつ》れた皺《しわ》に引掛《ひつかゝ》つてさうしてほろりと枕《まくら》に落《お》ちるのであつた。
 勘次《かんじ》は一|度《ど》も念佛寮《ねんぶつれう》を顧《かへり》みなかつた。五六|日《にち》過《す》ぎて與吉《よきち》は復《ま》た醫者《いしや》へ連《つ》れられた。醫者《いしや》は穢《きたな》く成《な》つた繃帶《ほうたい》を解《と》いてどろりとした白《しろ》い藥《くすり》を復《ま》た陶製《たうせい》の板《いた》で練《ね》つて貼《は》つた。先頃《さきごろ》のよりも濃《こ》くして貼《は》つたからもう此《こ》れで遠《とほ》い道程《みちのり》を態々《わざ/\》來《こ》なくても此《こ》れを時々《とき/″\》貼《は》つてやれば自然《しぜん》に乾《かわ》いて畢《しま》ふだらうと、其《そ》の白《しろ》い藥《くすり》とそれからガーゼとを袋《ふくろ》へ入《い》れてくれた。與吉《よきち》は俄《にはか》に勢《いきほ》ひづいた。彼《かれ》は時々《とき/″\》卯平《うへい》の側《そば》へも行《い》つた。卯平《
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