》く巨人《きよじん》の爪先《つまさき》には此《こ》の平坦《へいたん》な田《た》や畑《はた》や山林《さんりん》の間《あひだ》に介在《かいざい》して居《ゐ》る各《かく》村落《そんらく》の茅屋《あばらや》は悉《こと/″\》く落葉《おちば》を擡《もた》げて出《で》た茸《きのこ》のやうな小《ちひ》さな悲慘《みじめ》な物《もの》でなければならなかつた。各自《かくじ》の直上《ちよくじやう》を中心點《ちうしんてん》にして空《そら》に弧《こ》を描《ゑが》いた其《そ》の輪郭外《りんくわくぐわい》の横《よこ》にそれから斜《なゝめ》に見《み》える廣《ひろ》く且《か》つ遠《とほ》い空《そら》は黄褐色《くわうかつしよく》な霧《きり》の如《ごと》き埃《ほこり》の爲《ため》に只《たゞ》※[#「火+稻のつくり」、第4水準2−79−88]《ほのほ》に燒《や》かれたやうである。卯平《うへい》は自分《じぶん》の小屋《こや》に身《み》を窄《すぼ》めた。暫《しばら》く彼《か》の火鉢《ひばち》から立《た》つて、狹《せま》い壁《かべ》から壁《かべ》に衡突《ぶつか》つて彷徨《さまよ》ひ出《で》た薄《うす》い煙《けぶり》が疾風《しつぷう》の爲《ため》に直《す》ぐにごうつと蹴散《けち》らされて畢《しま》つた。狹《せま》い小屋《こや》の内《うち》はそれから復《ま》た沈《しづ》んだ。卯平《うへい》は少《すこ》し開《ひら》いた戸口《とぐち》から其《そ》の小《ちひ》さく蹙《しが》めた目《め》で外《そと》を見《み》た。狹《せま》い庭《には》の先《さき》に紙捻《こより》を植《う》ゑたやうな桑畑《くはばたけ》の乾燥《かんさう》しきつた輕鬆《けいしよう》な土《つち》が黄褐色《くわうかつしよく》な霧《きり》の中《なか》へ吹《ふ》つ立《た》つて行《ゆ》くのが見《み》える。さうして南《みなみ》の家《うち》は極《きは》めてぼんやりとして其《そ》の形態《けいたい》が現《あら》はれて又《また》隱《かく》れた。栗《くり》の木《き》の側《そば》に木《き》の枝《えだ》を杙《くひ》に打《う》つて拵《こしら》へた鍵《かぎ》の手《て》へ引《ひ》つ掛《か》けた桔槹《はねつるべ》が、ごうつと吹《ふ》く毎《ごと》にぐらり/\と動《うご》いて釣瓶《つるべ》が外《はづ》れ相《さう》にしては外《はづ》れまいとして爭《あらそ》うて騷《さわ》いで居《ゐ》る。卯平《うへい》は
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