》つて居《ゐ》た塊《かたまり》は解《ほぐ》せば直《すぐ》に吹《ふ》き拂《はら》はれた。おつぎは當面《まとも》に埃《ほこり》を受《う》けるのには遠《とほ》く吹《ふ》きつける土砂《どしや》が頬《ほゝ》を走《はし》つて不快《ふくわい》であつた。手拭《てぬぐひ》の端《はし》を捲《ま》くつて沿《あ》びせる埃《ほこり》の爲《ため》に髮《かみ》の毛《け》の荒《あ》れるのを酷《ひど》く嫌《きら》つた。それでも其《その》手《て》もとは疎略《そりやく》ではなかつた。勘次《かんじ》は矢立《やたて》の如《ごと》き硬直《かうちよく》な身體《からだ》を伸長《しんちやう》し屈曲《くつきよく》させて一|歩《ぽ》/\と運《はこ》んだ。彼《かれ》は周圍《しうゐ》に無數《むすう》な樹木《じゆもく》の泣《な》いて囁《さゝや》くのを耳《みゝ》に入《い》れなかつた。加之《それのみでなく》彼《かれ》は自分《じぶん》の耳朶《みゝたぶら》に鳴《な》るさへ心《こゝろ》づかぬ程《ほど》懸命《けんめい》に唐鍬《たうぐは》を打《う》つた。彼《かれ》は滿身《まんしん》に汗《あせ》して居《ゐ》た。
 卯平《うへい》は暇《ひま》を惜《を》しがる勘次《かんじ》が唐鍬《たうぐは》を執《とつ》て出《で》た時《とき》朝餉《あさげ》の後《あと》の口《くち》を五月蠅《うるさ》く鳴《な》らしながら火鉢《ひばち》の前《まへ》にどつかりと坐《すわ》つて居《ゐ》た。破《やぶ》れた草葺《くさぶき》の家《いへ》をゆさぶつて西風《にしかぜ》がごうつと打《う》ちつけて來《き》た時《とき》には火鉢《ひばち》の※[#「火+畏」、第3水準1−87−57]《おき》はまだ白《しろ》く灰《はひ》の皮《かは》を被《かぶ》つて暖《あたゝ》かゝつた。天井《てんじやう》もない屋根裏《やねうら》から煤《すゝ》が微《かす》かにさら/\と散《ち》つて、時々《ときどき》ぽつりと凝集《こゞ》つた儘《まゝ》に落《お》ちた。喬木《けうぼく》が遮《さへぎ》り立《た》つて其《そ》の梢《こずゑ》に蒼《あを》い空《そら》を見《み》せて居《ゐ》る庭《には》へすら疾風《しつぷう》の驚《おどろ》くべき周到《しうたう》な手《て》が袋《ふくろ》の口《くち》を解《と》いて倒《さかさ》にしたやうに埃《ほこり》が滿《み》ちてさら/\と沈《しづ》んだ。一|日《にち》さうして止《と》め處《ど》もなく駈《か》つて行《ゆ
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