ひかり》で包《つゝ》まれた。其《そ》の遠《とほ》く連《つらな》つた山々《やま/\》の頂巓《いたゞき》にはぽつり/\と大小《だいせう》の簇雲《むらくも》が凝《こ》つた儘《まゝ》に掻《か》き亂《みだ》されて暫《しばら》く動《うご》かなかつた。遂《つひ》にはそれが一つに成《な》つて山々《やま/\》の所在《しよざい》を暗《くら》まして、其《そ》の末端《まつたん》が油煙《ゆえん》の如《ごと》く空《そら》に向《むか》つて消散《せうさん》しつゝあるやうに見《み》え始《はじ》めた。其處《そこ》には毎日《まいにち》必《かなら》ず喧※[#「囂」の「頁」に代えて「臣」、第4水準2−4−46]《けんがう》な跫音《あしおと》が人《ひと》の鼓膜《こまく》を騷《さわ》がしつゝある其《そ》の巨人《きよじん》の群集《ぐんじゆ》が、其《そ》の目《め》からは悲慘《みじめ》な地上《ちじやう》の凡《すべ》てを苛《いぢ》めて爪先《つまさき》に蹴飛《けと》ばさうとして、山々《やま/\》の彼方《かなた》から出立《しゆつたつ》したのだ。其《そ》の驚《おどろ》くべき迅速《じんそく》な脚《あし》が空間《くうかん》を一|直線《ちよくせん》に、さうして僅《わづか》な障害物《しやうがいぶつ》であるべき梢《こずゑ》の凡《すべ》てを壓《お》しつけ壓《お》しつけ林《はやし》を越《こ》えて疾驅《しつく》して來《く》るのは今《いま》もう直《すぐ》である。竹《たけ》を伐《き》つて束《つか》ねたやうに寸隙《すんげき》もなく簇《むら》がつて居《ゐ》る其《そ》の爪先《つまさき》に蹴《け》られては怖《おび》えに怖《おび》えた草木《さうもく》は皆《みな》聲《こゑ》を放《はな》つて泣《な》くのである。さうしてもう泣《な》かねば成《な》らぬ時間《じかん》が迫《せま》つて居《ゐ》る。
勘次《かんじ》は霜《しも》白《しろ》い自分《じぶん》の庭《には》を往來《わうらい》へ出《で》ると無器用《ぶきよう》な櫟《くぬぎ》の林《はやし》が彼《かれ》の行《ゆ》くべき方《かた》に從《したが》つて道《みち》に沿《そ》うて連《つらな》つて居《ゐ》る。彼《か》の破《やぶ》れて、毎日《まいにち》打《う》ちつける疾風《しつぷう》の爲《た》めに傾《かた》むけられた笹《さゝ》の垣根《かきね》には、狹《せま》い往來《わうらい》を越《こ》えて櫟《くぬぎ》の落葉《おちば》が熊手《くまで
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