器《はりき》の水《みづ》を日《ひ》に翳《かざ》して發見《はつけん》した一|點《てん》の塵芥《ごみ》であつた。
 勘次《かんじ》は田圃《たんぼ》が竭《つ》きた時《とき》村落《むら》を過《す》ぎて臺地《だいち》へ出《で》た。村落《むら》の垣根《かきね》には稻《いね》を掛《か》けて居《ゐ》る人々《ひとびと》があつた。道《みち》行《ゆ》く人《ひと》を見《み》たがる癖《くせ》の彼等《かれら》は皆《みな》忙《いそが》しげな勘次《かんじ》を見《み》た。勘次《かんじ》は他人《ひと》が自分《じぶん》を見《み》ることを知《し》つた時《とき》肘《ひぢ》を復《ま》た叮嚀《ていねい》に抱《だ》いた。臺地《だいち》には林《はやし》の間《あひだ》に陰氣《いんき》な畑《はたけ》が開墾《かいこん》されてあつた。彼《かれ》は開墾地《かいこんち》の土質《どしつ》と作物《さくもつ》とを非常《ひじやう》な注意《ちうい》で見《み》た。又《また》村落《むら》があつて廣《ひろ》い畑《はたけ》が展開《てんかい》した。畑《はたけ》は陸稻《をかぼ》を刈《か》つた儘《まゝ》の處《ところ》が幾《いく》らもあつた。彼《かれ》は陸稻《をかぼ》の刈株《かりかぶ》を叮嚀《ていねい》に草鞋《わらぢ》の先《さき》で蹂《ふ》んで見《み》た。百姓《ひやくしやう》がちらほらと動《うご》いて麥《むぎ》を蒔《ま》くべき土《つち》が清潔《せいけつ》に耕《たがや》されつゝある。畑《はたけ》の黒《くろ》い土《つち》は彼等《かれら》の技巧《ぎかう》を發揮《はつき》して叮嚀《ていねい》に耕《たがや》されゝば日《ひ》がまだそれを乾《ほ》さない内《うち》は只《たゞ》清潔《せいけつ》で快《こゝろ》よい感《かん》じを見《み》る人《ひと》の心《こゝろ》に與《あた》へるのである。
 さういふ村落《むら》を包《つゝ》んで其處《そこ》にも雜木林《ざふきばやし》が一|帶《たい》に赭《あか》くなつて居《ゐ》る。他《た》に先立《さきだ》つて際《きは》どく燃《も》えるやうになつた白膠木《ぬるで》の葉《は》が黒《くろ》い土《つち》と遠《とほ》く相《あひ》映《えい》じて居《ゐ》る。勘次《かんじ》は自分《じぶん》の麥《むぎ》を蒔《ま》くべき畑《はたけ》の用意《ようい》がまだ十|分《ぶん》でないことを思《おも》つた。彼《かれ》は前年《ぜんねん》寒《さむ》さが急《きふ》に襲《おそ》うた時
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