ひて》を見《み》つけて力《ちから》を得《え》たやうにいつた。
「此《こ》んでもまさか、此《こ》の村落《むら》だつて隨分《ずいぶん》かぶつた處《ところ》も有《あ》んだから全然《まるつきり》なんともねえつちこともねえがねえ」南《みなみ》の女房《にようばう》は聲《こゑ》を低《ひく》くしていつた。
「そんでも此處《こゝ》らぢや居《ゐ》る處《とこ》にや支障《さはり》ねえんだからなんちつても諦《あきら》めはようがさね、わし等《ら》方《はう》なんぞぢや、土手《どて》へ筵圍《むしろがこ》ひしてやつとこせ凌《しの》いだものなんぼ有《あ》つたかせ、土手《どて》に居《ゐ》ても雨《あめ》せえなけりやえゝが、降《ふ》られちや酷《ひで》えつち噺《はなし》でがしたよ、そんでもまあわし等《らあ》、家《うち》に居《え》られんな居《え》られたんだからまあ同《おな》じにもようがしたのせ、そんでも床《ゆか》の上《うへ》へ四|斗樽《とだる》かう倒《さかさ》にして置《お》えてね、其《その》上《うへ》へ板《いた》渡《わた》してやつとまあ居通《ゐとほ》しあんしたがね、煮燒《にやき》すんのもやつとこせで、隣近所《となりきんじよ》は有《あ》つたつて往《い》つたり來《き》たりすんぢやなし、何程《なんぼ》心細《こゝろぼせ》えか分《わか》んねえもんですよ、尤《もつと》もこれ、死《し》ぬ者《もの》せえあんだから斯《か》うして居《え》られんな難有《ありがて》え樣《やう》なもんぢやあるが、そんでも四|斗樽《とだる》の太《ふて》え箍《たが》ん處《ところ》むぐつた時《とき》や、夜《よる》横《よこ》に成《な》つて見《み》たつて直《ぢき》耳《みゝ》の側《そば》でさら/\つとかう水《みづ》が動《うご》いてんだから、放心《うつかり》眠《ねむ》つたらそつくり持《も》つてかれつかどうだか分《わか》んねえと思《おも》つてね、ぼつちりともはあ云《ゆ》はんねえで居《ゐ》たのせえ、
 それから板《いた》の端《はじ》ん處《とこ》からそろつと手《てえ》出《だ》して見《み》つと宵《よひ》の口《くち》にやさうでもねえのがひやつと手《て》の先《さき》が直《す》ぐ水《みづ》へ觸《さあ》つた時《とき》にや悚然《ぞつ》とする樣《やう》でがしたよ、それからはあ船《ふね》は枕元《まくらもと》へ繋《つな》いでたんだが、本當《ほんたう》に枕元《まくらもと》なのせえ、みんなして
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