《こ》まれた樣《やう》に此《こ》の時《とき》微笑《びせう》を洩《も》らして
「俺《お》らも今《いま》んなつてからぢやこれ、噺《はなし》するやうなもんだが一《ひと》しきりや泣《な》いたかんな本當《ほんたう》に、こんでも此《こ》の位《くらえ》にすんにやゝつとこせえだぞ」といつた。
「おつぎも働《はたら》け相《さう》だな、きり/\としてなあ、先刻《さつき》俺《お》ら蕎麥《そば》打《ぶ》つてんの見《み》てゝも心持《こゝろもち》えゝ樣《やう》だつけよ、仕事《しごと》はなんでも身拵《みごしれ》えのえゝもんでなくつちやなあ、此《こ》れもおめえが仕込《しこみ》の所爲《せゐ》だんべが」おつたはさういつて又《また》
「そりやさうとおつかさまに其儘《そつくり》だなあ」と側《そば》に居《ゐ》たおつぎに目《め》を移《うつ》した。おつぎはそれを聞《き》くと共《とも》に身《み》を避《さ》ける樣《やう》に手桶《てをけ》を持《も》つて庭《には》へ出《で》た。
「俺《お》らもこんで嚊《かゝあ》に死《し》なれた當座《たうざ》にや此《こ》れも役《やく》に立《た》たねえから泣《な》きぬいたよ」勘次《かんじ》は俄《にはか》にしんみりとしていつた。おつたはお品《しな》のことが勘次《かんじ》の口《くち》から出《で》た時《とき》微《かす》かに苦笑《くせう》して
「ほんに、俺《お》ら彼《あ》ん時《とき》にや來《き》ねえつちやつたつけが、遠《とほ》くの方《はう》へ行《い》つてたもんだから、おめえにやはあ惡《わる》く思《おも》はれべえたあ思《おも》つてたのよ」おつたは漸《やうや》くのことで然《しか》も表面《へうめん》は事《こと》もなげにいつて畢《しま》つた。
「俺《お》ら先刻《さつき》から見《み》てんだが道具《だうぐ》は能《よ》く大事《でえじ》にすつと見《み》えて鎌《かま》なんぞでも光《ひか》つてつことなあ、それに能《よ》くかう三日月姿《みかづきなり》に減《へ》らせたもんだな、研《と》ぎ方《かた》も餘《よ》つ程《ぽど》氣《き》をつけなくつちやかうは出來《でき》ねえな、道具《だうぐ》も斯《か》うすりや何時《いつ》までゝも使《つか》へて廉《やす》えものさな」おつたは少《すこ》し慌《あわ》てた樣《やう》に然《しか》も成《な》るべく落附《おちつ》かうと勉《つと》めつゝ噺《はなし》を外《そら》した。
「唐鍬《たうぐは》もたえしたも
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