特色《とくしよく》を現《あらは》して切口《きりくち》から忽《たちま》ちに罅割《ひゞわ》れになつて堅《かた》く乾燥《かんそう》した。だん/\燒《や》いて膨《ふく》れても外側《そとがは》は齒齦《はぐき》を痛《いた》める程《ほど》硬《こは》ばつて來《き》た。卯平《うへい》は其《そ》の一つさへ滿足《まんぞく》に嚥《の》み下《くだ》さうとするには寧《むし》ろ粗剛《こは》いぼろ/\な飯《めし》よりも容易《ようい》でなかつた。さうなつてからは勘次《かんじ》は竭《つ》きるまで能《よ》く燒《や》いた。卯平《うへい》はむつゝりとして額《ひたひ》に深《ふか》く刻《きざ》んだ大《おほ》きな皺《しわ》を六《むづ》ヶ|敷相《しさう》に動《うご》かしては堅《かた》い餅《もち》を舐《しやぶ》つた。卯平《うへい》の膳《ぜん》には冷《つめ》たく成《な》つた餅《もち》が屹度《きつと》残《のこ》された。腹《はら》を減《へ》らして學校《がくかう》から歸《かへ》つて來《く》る與吉《よきち》が何時《いつ》でもそれを噛《かじ》るのであつた。
勘次《かんじ》は又《また》蕎麥《そば》を打《う》つたことがあつた。彼《かれ》は黄蜀葵《ねり》の粉《こ》を繼《つな》ぎにして打《う》つた。彼《かれ》は又《また》おつぎへ注意《ちうい》をして能《よ》くは茹《う》でさせなかつた。手桶《てをけ》の冷《つめ》たい水《みづ》で曝《さら》した蕎麥《そば》は杉箸《すぎはし》のやうに太《ふと》いのに、黄蜀葵《ねり》の特色《とくしよく》の硬《こは》さと滑《なめ》らかさとで椀《わん》から跳《をど》り出《だ》し相《さう》に成《な》るのであつた。黄蜀葵《ねり》は能《よ》く畑《はたけ》の周圍《まはり》に作《つく》られて短《みじか》い莖《くき》には暑《あつ》い日《ひ》に大《おほ》きな黄色《きいろ》い花《はな》を開《ひら》く。其《そ》の根《ね》を乾燥《かんさう》して粉《こ》にして入《い》れゝば蕎麥《そば》の分量《かさ》が滅切《めつきり》殖《ふ》えるといふので、滿腹《まんぷく》する程度《ていど》に於《おい》ては只管《ひたすら》食料《しよくれう》の少量《せうりやう》なることのみを望《のぞ》んで居《ゐ》る勘次《かんじ》は毎年《まいねん》作《つく》つて屹度《きつと》それを用《もち》ひつゝあつた。
卯平《うへい》の齒齦《はぐき》には蕎麥《そば》が辷《すべ》つて噛《
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