胡坐《あぐら》を掻《か》いて居《ゐ》ることもあつた
與吉《よきち》は學校《がくかう》から歸《かへ》つてひつそりとした家《いへ》に只《たゞ》卯平《うへい》がむつゝりとして居《ゐ》るのを見《み》ると威勢《ゐせい》よく駈《か》けて來《き》たのも悄《しよ》げて風呂敷包《ふろしきづゝみ》の書籍《しよせき》をばたりと座敷《ざしき》へ投《な》げて庭《には》へ出《で》て畢《しま》ふ。卯平《うへい》は
「よき、待《ま》つてろ、そら」と財布《さいふ》から面倒《めんだう》に五|厘《りん》の銅貨《どうくわ》を拾《ひろ》ひ出《だ》して投《なげ》てやる。與吉《よきち》は戸《と》の陰《かげ》に居《ゐ》ては忸怩《もぢ/\》して容易《ようい》に取《と》らないで然《しか》も欲《ほ》し相《さう》に筵《むしろ》の上《うへ》の銅貨《どうくわ》を見《み》る。卯平《うへい》はさうすると又《また》のつそりと懶《ものう》げに身體《からだ》を戸口《とぐち》まで動《うご》かして與吉《よきち》の手《て》に渡《わた》してやる。與吉《よきち》は一|散《さん》に駈《か》けて菓子《くわし》を求《もと》めに行《ゆ》く。卯平《うへい》の窪《くぼ》んだ茶色《ちやいろ》の眼《め》が後《あと》で獨《ひとり》蹙《しが》んだやうに成《な》るのである。
卯平《うへい》が村落《むら》の店《みせ》に懶《ものう》い身體《からだ》を据《す》ゑて煙草《たばこ》を吹《ふ》かして居《ゐ》る處《ところ》へ與吉《よきち》は行合《いきあは》せることがあつても遠《とほ》くの方《はう》から卯平《うへい》を見《み》て居《ゐ》て、近《ちか》づきもしないが去《さ》らうともしないで居《ゐ》る。卯平《うへい》は屹度《きつと》ガラス戸《ど》を立《たて》て店臺《みせだい》から自分《じぶん》で菓子《くわし》をとつてやる。それでも與吉《よきち》は菓子《くわし》を噛《か》ぢりながら側《そば》へは寄《よ》らうともしなかつた。
「與吉《よきち》らたえしたもんだな、始終《とほして》もらつてな」店《みせ》の女房《にようばう》がいふのを聞《き》くのは與吉《よきち》よりも寧《むし》ろ卯平《うへい》が心《こゝろ》に滿足《まんぞく》を感《かん》ずるのであつた。然《しか》し與吉《よきち》は恁《か》うして段々《だん/\》卯平《うへい》に近《ちか》づいて學校《がくかう》から歸《かへ》つたといつては
「爺《
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