さつき》見《み》てえに泣《な》いてんのに惡口《わるくち》なんぞいふな罪《つみ》だよなあ」と若《わか》い女房等《にようばうら》はそれでもしんみりといつた。
其《そ》の夜《よ》から暫《しばら》くの間《あひだ》勘次《かんじ》は以前《いぜん》とは異《かは》つておつぎを獨《ひと》り放《はな》して出《だ》すことが有《あ》る樣《やう》に成《な》つた。さうかと思《おも》つて居《ゐ》る内《うち》に村落中《むらぢう》が復《ま》た勘次《かんじ》のおつぎに對《たい》する態度《たいど》の全《まつた》く以前《いぜん》に還《かへ》つたことを認《みと》めずには居《ゐ》られなくなつた。村落《むら》の目《め》は勢《いきほ》ひ嫉妬《しつと》と猜忌《さいぎ》とそれから新《あらた》に起《おこ》つた事件《じけん》に對《たい》するやうな興味《きようみ》とを以《もつ》て勘次《かんじ》の上《うへ》に注《そゝ》がれねばならなかつた。
十六
勘次《かんじ》は殆《ほと》んど事毎《ことごと》に冷笑《れいせう》の眼《まなこ》を以《もつ》て見《み》られて居《ゐ》るのであつたが然《しか》しそれが厭《いや》な感情《かんじやう》を彼《かれ》に與《あた》へるよりも、彼《かれ》は彼《かれ》の懷《ふところ》に幾分《いくぶん》の餘裕《よゆう》を生《しやう》じて來《き》たことが凡《すべ》ての不滿《ふまん》を償《つぐな》うて猶《なほ》餘《あまり》あることであつた。お品《しな》がまだ生《い》きて居《ゐ》る頃《ころ》隣《となり》の主人《しゆじん》の内儀《かみ》さんに向《むか》つて
「お内儀《かみ》さん等《ら》何《なん》にも心配《しんぺえ》なんざ無《な》くつて晴々《せい/\》として居《え》んでござんせうね」お品《しな》はつく/″\といつたことがある。
「何故《なぜ》そんなこといふんだい」内儀《かみ》さんは怪《あや》しんで聞《き》いたら
「そんでもお内儀《かみ》さん等《ら》喰《た》べる心配《しんぺえ》なんざちつともねえんだから、わたしやさうだと思《おも》つてせえ」お品《しな》はいつた。内儀《かみ》さんは成程《なるほど》さういふ心持《こゝろもち》で居《ゐ》るのかと、それから種々《いろ/\》と身分《みぶん》相應《さうおう》な苦勞《くらう》の止《や》まぬことを噺《はなし》て聞《き》かせると
「さうでござんせうかねお内儀《かみ》さん、
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