《ふ》いた。焔《ほのほ》の赤《あか》い舌《した》がべろ/\と長《なが》く立《た》つた。
再《ふたゝ》び蓋《ふた》をとつた時《とき》には掃除《さうぢ》の足《た》らぬ風呂桶《ふろをけ》のなかには前夜《ぜんや》の垢《あか》が一|杯《ぱい》に浮《う》いて居《ゐ》た。其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》ことには關《かま》はずに田植《たうゑ》の同勢《どうぜい》はずん/\と這入《はひ》つた。彼等《かれら》は殆《ほと》んど只《たゞ》手拭《てぬぐひ》でぼちや/\と身體《からだ》をこすつて出《で》た。足《あし》の爪先《つまさき》に詰《つ》まつた泥《どろ》を落《おと》すことさへ仕《し》なかつた。
「燻《けぶ》つてえのそつちへおん出《だ》さなくつちや仕《し》やうねえや」風呂《ふろ》から出《で》た儘《まゝ》拭《ぬぐ》ひもせぬ足《あし》に下駄《げた》を穿《は》いて裸《はだか》の臀《しり》を他人《たにん》に向《む》けて立《た》つた一|人《にん》が後《うしろ》を顧《かへり》みていつた。
「なあに管《かま》あねえ」後《あと》から目《め》を蹙《しか》めながら一人《ひとり》が首筋《くびすぢ》まで沈《しづ》んだ。それから風呂桶《ふろをけ》へ腰《こし》を掛《か》けてごし/\と洗《あら》ひながら
「此《こ》りや燻《けぶ》つてえ」と復《また》沈《しづ》んだ儘《まゝ》ごし/\と垢《あか》を落《おと》して居《ゐ》たが
「あゝ善《え》え處《とこ》だ、よう、おつぎ、少《ちつ》と此處《ここ》まで來《き》てくんねえか」といつた。彼《かれ》は百姓《ひやくしやう》の間《あひだ》には馬《うま》を曳《ひ》いて歩《ある》く村落《むら》の博勞《ばくらう》であつた。
「どうしたもんだんべ、兼《かね》さん等《ら》自分《じぶん》で這入《へえ》んのに燻《けむ》つたけりや、おん出《だ》してからへえつたら善《よ》かんべなあ、それに怎的《どう》したもんだ一同《みんな》居《ゐ》て、水汲《みずく》みに來《き》たものなんぞ使《つか》あねえたつてよかんべなあ」おつぎは輕《かる》く窘《たしな》める樣《やう》にいつて二つの手桶《てをけ》をそつと置《お》いて、燻《いぶ》つて居《ゐ》る薪《たきゞ》を出《だ》して遣《や》つた。
「おつぎに掻《か》ん出《だ》して貰《もら》あんでなくつちや厭《や》だつちから俺《お》
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