]を蒸籠《せいろう》から杓子《しやくし》で臼《うす》へ扱《こ》き落《おと》しながら側《そば》に立《た》つて居《ゐ》る與吉《よきち》へ少《すこ》し遣《や》つた。程《ほど》よく蒸《む》した其《その》ふかし[#「ふかし」に傍点]を與吉《よきち》は甘相《うまさう》にたべた。おつぎも指《ゆび》に附《つ》いたのを前齒《まへば》で噛《か》むやうにして口《くち》へ入《い》れた。蒸氣《ゆげ》の立《た》つ臼《うす》を勘次《かんじ》は暫《しばら》く杵《きね》の先《さき》で捏《こ》ねた。杵《きね》の先《さき》が粘《ねば》つて離《はな》れなく成《な》る。おつぎは米研桶《こめとぎをけ》へ水《みづ》を汲《く》んでそれへ浮《うか》べた杓子《しやくし》で杵《きね》の先《さき》を扱落《こきおと》して臼《うす》の中《なか》を丸《まる》い形《かたち》に直《なほ》す。さうすると勘次《かんじ》は力《ちから》を極《きは》めて臼《うす》の中央《ちうあう》を打《う》つ。それが幾度《いくど》も反覆《はんぷく》された。庭《には》の木立《こだち》の陰翳《かげ》が濃《こ》く成《な》つて月《つき》の光《ひかり》はきら/\と臼《うす》から反射《はんしや》した。蒸暑《むしあつ》い中《うち》にも凡《すべ》てが水《みづ》の樣《やう》な月《つき》の光《ひかり》を浴《あ》びて凉《すゞ》しい微風《びふう》が土《つち》に觸《ふ》れて渡《わた》つた。おつぎは臼《うす》から餅《もち》を拗切《ねぢき》つて茗荷《めうが》の葉《は》に乘《の》せて一《ひと》つ/\膳《ぜん》へ並《なら》べた。少《すこ》し丸《まる》みを缺《か》いた十三|日《にち》の月《つき》が白《しろ》く其《そ》の一つ/\の茗荷《めうが》の葉《は》の上《うへ》に光《ひか》つた。冷水《れいすゐ》を打《う》つた樣《やう》な※[#「柿」の正字、第3水準1−85−57]《かき》の葉《は》がゆら/\と動《うご》いて後《うしろ》の林《はやし》の竹《たけ》の梢《こずゑ》もさら/\と鳴《な》つた。
 それでも忙《いそが》しいおつぎは汗《あせ》を流《なが》しながら先《ま》づ茗荷《めうが》の餅《もち》を佛壇《ぶつだん》に供《そな》へた。それから別《べつ》に拗切《ねぢき》つた餅《もち》が豆粉《きなこ》と共《とも》に手《て》ランプの下《もと》に置《お》かれた。與吉《よきち》は直《すぐ》に座敷《ざしき》へ坐《すわ
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