たえ》なのせどうも、そんで極《ご》く堅《か》てえもんだから他人《ひと》にも面倒《めんどう》見《み》られて其《そ》の位《くれえ》だから錢《ぜに》も持《も》つてんでさ、さうしたら何處《どこ》で聞《き》いたか來《き》て騙《だま》して連《つ》れてつてね、えゝわしら等《ら》※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、154−10]《あね》せお内儀《かみ》さん」彼《かれ》は目《め》を峙《そばだ》てた。
「盲目《めくら》も有繋《まさか》お袋《ふくろ》だから畸形《かたわ》に成《な》つちや他人《ひと》の處《とこ》なんぞよりやえゝと思《おも》つたんでがせうね、さうしたらお内儀《かみ》さん盲目《めくら》が錢《ぜに》叩《はた》いつちやつたら又《また》打棄《うつちや》つて、聞《き》いて見《み》ちや酷《ひ》でえ噺《はなし》なのせ本當《ほんたう》に、そん時《とき》にや盲目《めくら》もわしが處《とこ》へ泣《な》きついて來《き》て、わしもはあ、二十先《はたちさき》にも成《な》つて幾《いく》らなんだつて騙《だま》さつるなんて盲目《めくら》ことも忌々敷《えめえましい》やうでがしたが、わしも其《そ》ん時《とき》や嚊《かゝあ》に死《し》なれた當座《たうざ》なもんだからさう薄情《はくじやう》なことも出來《でき》ねえと思《おも》つて、そんでも一|晩《ばん》泊《と》めて、わしも困《こま》つちや居《ゐ》たが※[#「穀」の「禾」に代えて「釆」、154−15]《こく》もちつたあ遣《や》つたのせ、わしやお内儀《かみ》さん嚊《かゝあ》おつ殺《ころ》してからつちものは乞食《こじき》げだつて手攫《てづか》みで物《もの》出《だ》したこたあねえんでがすかんね、そらおつうげもはあ斷《ことわ》つて置《お》くんでがすから、わしやお内儀《かみ》さん其《そ》れ丈《だけ》は心掛《こゝろがけ》てんでがすよ」勘次《かんじ》は内儀《かみ》さんの心裡《こゝろ》に伏在《ふくざい》して居《ゐ》る何物《なにもの》かを求《もと》めるやうな態度《たいど》でいつた。
「さうだともさね、さういふ心掛《こゝろがけ》で居《ゐ》さへすりや決《けつ》して間違《まちがひ》はないからね」内儀《かみ》さんはいつて更《さら》に以前《いぜん》からの噺《はなし》に幾《いく》らか釣《つ》り込《こ》まれて居《ゐ》るやうで
「そりやさうと其《その》盲目《めくら》はど
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