のさいてゐるのに氣が着いた。皀莢《さいかち》のやうで更に小さい柔かな葉が繁つて花はふさふさと幾つも空を向いて立つてゐる。すぐさま枝に手を掛けると痛い刺が立つた。放さうとしても逆さに生えた刺なのですぐには放れぬ。漸くで二房三房とつた。豆の花と同じ形のが聚《あつま》つてゐるのである。少し隔つてから振り返つて見ると滴る樣な新緑の間にほつほつと黄色い房のあるのは際立つて鮮かであつた。あとで聞いたら雲實《じやけついばら》とも黄皀莢《さるかけいばら》ともいふ花であつた。
岸が高いのに水が淺いといふのであるから兎にも角にも川をのぼつて行くことにした。樟《くす》の造林へは諦めをつけたのだ。季節は急に暑くなつて一兩日このかた單衣《ひとへ》に脱ぎ替へたのであるから水を行くのは猶更心持がよい。ころころといふ幽かな樣な聲がそこここに聞える。ぽしやぽしやと音を立てて行くと近い聲がはたと止つて何か知らぬが水へ飛び込むものがある。能く見ると底に吸ひついてゐる。そつと近づいて急に上から押へつけて攫《つかま》へた。蛙に似て痩せこけたるものだ。自分は必ず河鹿《かじか》であると悟つた。河鹿に極つてゐるのだ。圖解以外に河鹿
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