が梢よりほがら/\と春は去ぬらむ
手紙の歌
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明治四十年八月、岡麓氏予が請を容れて或事のために奔走せらる。しばらくしてその事の成就すべきよし報じこされたれば手紙をかくとて其はしに
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我が植ゑし庭の葉鷄頭くれなゐのかそけく見えて未だ染めずも
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九月にいりて消息なし。心もとなければ書きておくる
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天の川あめを流れて、限りなく遠くしあれど、桐の木の梢に近し、其川の近く見えつゝ、遠くして音なきが如、我が待てるたより聞えず、夜に日に待てども。
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はじめ事もし成らば我が鬼怒川の鮭をおくらんと約しけるを、十月に入りて鮭の季節も末にならむとするに其事の空しからむとするを憂へて月の十九日手紙のかはりに書きておくりける
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青笹に包みて鮭はおくらむとことしはやらず欲しといふとも
鬼怒川の鮭を欲りすといふ人はいふべき時は未だ來らず
白銀の鮭を小笹に包まひてやるべくあらば豈憂へむや
鬼怒川を晝は淀に居夜されば幾瀬の網も鮭は越すといふ
いさゝかのこと
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