たり、漁舟皆河口よりかへりぬ。
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ほこりかも吹きあげたると見るまでに沖邊は闇し磯は白波
眞白帆にいなさをうけて川尻ゆ潮の膨れにしきかへる舟
いさりぶね眞帆掛けかへるさし潮の潮目搖る波ゆりのぼる見ゆ
利根川の冬吐く水は冷たけれどかたへはぬるし潮目搖る波
利根川は北風《かたま》いなさの吹き替へにむれてくだる帆つぎてのぼる帆
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滿潮河口に浸入すれば河水と相衝き小波を揚げて明に一線を畫す、之を潮目といふ。蓋し淡水と鹹水《かんすい》とを相分つの意なり。
廿一日、夜雪ふりて深さ五寸に及ぶ、此の如きは此地稀に有る所なりといふ。
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松葉焚き煤火すゝたく蜑が家に幾夜は寢ねつ雪のふる夜も
波崎のや砂山がうれゆ吹き拂ふ雪のとばしり打ちけぶる見ゆ
しらゆきの吹雪く荒磯にうつ波の碎けの穗ぬれきらひ立つかも
吹き溜る雪が眞白き篠の群の椿が花はいつくしきかも
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波崎雜詠のうち
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薦かけて桶の深きに入れおける蛸もこほらむ寒き此夜は
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利根の河口は亂礁常に
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